夫婦別姓家庭の家系図 — 通称・事実婚・子の姓まで実務ガイド
夫婦の姓が異なる家庭でも、家系図は作成できます。本ガイドでは、2026 年時点の日本の制度(通称使用・事実婚・戸籍上の表記)と、家系図への記載方法を事実ベースで解説します。制度の是非ではなく、家族の歴史を残すための実務ガイドです。
1. 夫婦別姓に関する制度の現状(2026 年時点)
民法 750 条は「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と定め、現行制度は 夫婦同姓 です。最高裁大法廷は 2015 年 12 月 16 日 および 2021 年 6 月 23 日 に同規定を 合憲 と判断し、いずれも「制度のあり方は国会で議論されるべき」と付言しています。選択的夫婦別姓制度 については 2026 年時点で立法化されていません。
一方、旧姓の通称使用 に関する制度は近年拡張されています。
- マイナンバーカード(2019 年 11 月〜)・運転免許証(2019 年 12 月〜)で旧姓併記可
- 住民票・各種証明書での旧姓併記
- パスポートの別名併記(要件あり)
- 職場・官公庁での通称使用
2026 年時点では 戸籍上の姓 + 通称(旧姓) を併用する運用が制度上可能です。
2. 通称と戸籍名 — 家系図にはどう書くか
家系図の目的は「誰が誰の子か、誰と誰が夫婦か」を正確に残すことです。通称も戸籍名も両方記録する のが推奨される運用です。
推奨する書き方
家系図ずかんエディタを含む多くのソフトでは、人物に複数の名前フィールドがあります。
- primary(主たる呼び名): 日常的に使う名前
- maiden / official(戸籍上の名前): 法的書類に出る正式な氏名
- furigana(読み): 同姓同名対策
たとえば妻が法律上は夫の姓に変えたが職場では旧姓を使う場合、家系図では:
表示名: 鈴木 花子(旧姓) 戸籍名: 田中 花子 旧姓: 鈴木
のように併記します。後の世代が旧姓を知りたくなったとき、戸籍を取り直さなくても家系図上で確認できます。基本構造は 家系図の作り方ガイド と同じで、姓の表現フィールドを拡張する形です。
戸籍は 公的記録としての一次資料(戸籍の読み方ガイド 参照)であり、通称は 論文の著者名・職場の人脈・対外的な実績の登録名 として用いられる場合があります。両方を記録しておくと、後世が当該人物の業績を辿りやすくなります。
3. 事実婚カップルの家系図
婚姻届を出さず、共同生活を営むパートナー関係を 事実婚(内縁) と呼びます。
事実婚は戸籍上は他人のままで、住民票では続柄が「未婚の妻」「未婚の夫」などと記載されます。配偶者控除・遺族年金・相続権の扱いが法律婚と異なる点には注意が必要です(一部の社会保障制度では準ずる扱いがあるが、相続権は原則認められません)。
家系図は家族の実態を記録するもので、戸籍上の婚姻関係に限定されないパートナー関係も記載できます。事実婚カップルを描くときは:
- 関係線: 法律婚と同じく夫婦線で結ぶ
- 注釈: 「事実婚」「内縁」と明記(後世が法的婚姻と区別できるように)
- 開始時期: 共同生活を始めた年を記録
家系図ずかんエディタでは夫婦関係に「marriage / common-law / partnership」の種別を持たせられます。事実婚は common-law 区分にあたります。同様の関係性の記録方法については 同性カップルと家系図ガイド も参照してください。
4. 子の姓の取り扱い
家系図記述上、姓に関わる論点として 子の姓 があります。
民法 790 条により、嫡出子は 父母の氏を称する と定められ、法律婚では夫婦が婚姻時に定めた姓を名乗ります。離婚後に親権者と異なる姓を名乗りたい場合は、家庭裁判所の許可を得て「子の氏の変更」(民法 791 条)の手続きを行います。
事実婚カップルの子は 母の戸籍に入る のが原則で母の姓を名乗ります。父が認知しても子の姓は変わらず、父の姓に変えたい場合は「子の氏の変更」の申立てが必要です。
通称として、戸籍上の姓ではなく親のもう一方の姓を学校などで使う家庭もあります。家系図ではここでも 戸籍名 + 通称の併記 を推奨します。親と子を線で結べば、姓が異なっていても親子関係は明確に伝わります。
姓と家紋は別の概念です(苗字と家紋の関係ガイド 参照)。子の姓が片方の親と異なる場合でも、両系統の家紋を併記する記載方法が選択できます。
5. 海外制度の概観
夫婦の姓の扱いは国によって異なります。家系図の記載方法を考える際の参考情報として概観します。
別姓・選択制を採用する国
- 韓国: 婚姻後も夫婦別姓が原則。子は父系の姓を継ぐ慣習。
- 中国: 夫婦別姓が制度上の標準。子は父姓または母姓のいずれかを選択可。
- フランス: 戸籍上の名前は出生時のままで、通称として配偶者の姓を使う運用が可能。
- ドイツ: 同姓・別姓を選択可。
- アメリカ・イギリス: 法的には別姓・同姓・複合姓いずれも選択可。
同姓制度を採用する国
現行の日本法は夫婦同姓を採用しています。
国際結婚の場合
外国籍の配偶者を持つ場合、配偶者の本国法により別姓となるケースが多く、日本の戸籍でも別姓のまま登録される のが一般的です。詳しい運用は 国際結婚と家系図ガイド を参照してください。再婚や連れ子で姓の構成がさらに複雑になる場合は、ステップファミリーの家系図ガイド もあわせて参照してください。
6. 家系図ずかんエディタでの実践
家系図ずかんエディタは 登録不要・データ非送信 で、家族情報をローカルに保持できる設計です(詳細は 家系図の作り方ガイド)。
別姓家庭の場合の入力例:
- 名前フィールドで 戸籍名 + 通称(旧姓) を併記
- 夫婦関係を 法律婚 / 事実婚 / パートナーシップ から選択
- 親子関係は 両親両方 に線を引く(姓が異なっても)
- 必要に応じて 家紋を両系統併記
- PDF / GEDCOM で出力し、家族と共有
家系図は家族が辿ってきた経緯を記録するもので、法的な婚姻形態や姓の同異に関わらず、関係を整理して残せます。
このシーンのテンプレを使う
夫婦別姓・事実婚・通称併記に対応した家系図テンプレートを用意しています。
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関連する偉人家系図
家系図ずかん収録の歴史的な家系では、女性が家督を継ぎ姓が変わらなかった例や、養子縁組で姓が変わった例が多数記録されています。別姓家庭の家系図を考える際の参考になります。
上位 Pillar
- 戸籍で辿る家系図 → — 戸籍制度の仕組みと姓の表記の歴史
他のガイド
- 家系図の作り方 → — 家系図作りの全体像
- 戸籍の読み方 → — 戸籍上の姓・氏の読み方
- 国際結婚と家系図 → — 海外籍配偶者がいる家庭
- 同性カップルと家系図 → — 同性パートナー関係の表記
- ステップファミリーの家系図 → — 再婚・連れ子のいる家庭
- 苗字と家紋の関係 → — 姓が違っても家紋で繋がる
出典
| # | 種類 | 出典 | 検証 |
|---|---|---|---|
| 1 | 法令 | 民法 第 750 条(夫婦の氏) | ⬜ |
| 2 | 法令 | 民法 第 790 条(子の氏) | ⬜ |
| 3 | 判例 | 最高裁大法廷判決 2015 年 12 月 16 日(夫婦同氏制合憲判決) | ⬜ |
| 4 | 判例 | 最高裁大法廷決定 2021 年 6 月 23 日(夫婦同氏制再論判決) | ⬜ |
| 5 | 公式 | 法務省「選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について」 | ⬜ |
| 6 | 公式 | 内閣府男女共同参画局「選択的夫婦別氏制度に関する世論調査」 | ⬜ |
| 7 | 公式 | 総務省「住民票・マイナンバーカードへの旧氏(旧姓)併記について」 | ⬜ |
| 8 | 家系図ずかん内 | 戸籍で辿る家系図 Pillar | ✅ |
最終更新: 2026-05-01 運営: 家系図ずかん編集部 / X @okapi_tech